Vol.26 ハイイロチュウヒ Hen Harrier(Circus cyaneus)
2024.03.26
<分布など>
ロシア、中国北東部、ウクライナや北欧などで繁殖し、冬季は南下する。日本、韓国、台湾、中国からヨーロッパまで広域に広がる。モンゴルやアフリカ、インドではほとんど見られない。この種は生息域が非常に広い。ヨーロッパ個体群の繁殖雌数は56,300~86,600羽と推定されており、112,000~174,000羽の成鳥が生息すると推定されている(BirdLife International in prep.)。 ヨーロッパは全世界の生息域の約34%を占めていることから、全世界の個体数は330,000~512,000羽の成鳥が生息していると推定される。この推定は疑義が残る。生息域の改変が個体群サイズに及ぼす影響については不確実であるため、個体群の傾向 を決定することは困難である。ヨーロッパにおける全体的な傾向は不明確であるが(BirdLife International in prep.)、いくつかのヨーロッパ諸国で減少が報告されていることから、減少していることが疑われる(Fernandez-Bellon et al.)。 ヨーロッパでは生息域がここ数十年で縮小している(Keller et al.)。 アジアのロシアにおける傾向は不明である。この種は減少の危険が少ない、または判断が困難とされており、「低危険種(LC)」と評価されている。
現在の主な脅威は、農業の激化、湿地の消滅、再植林による生息地の変化である。植生の焼却は、繁殖地、非繁殖地ともにアイルランドで最もよく記録される圧力のひとつである(Caravaggi et al.)。 スコットランドのムーアと呼ばれる湿原などは、地域的に依然として深刻な圧力を受けている。300つがい以上の生息地があると推定されているにも関わらず、2013年にはイングランドで1組も営巣に成功していない(Pitches 2013)。2015年から2019年にかけて英国で衛星タグが付けられた117羽のハイイロチュウヒのヒナのうち、2020年6月に生存していたのはわずか15羽で、ほとんどが不審な状況で行方不明になっている(RSPB 2020)。中央ヨーロッパと東ヨーロッパでは違法に射殺されている(Tucker and Heath 1994)。
<分類>
亜種は分けられていない。
<渡り>
渡り個体がまとまって観察される場所はないが、冬季には暖地にやや移動する。
<飛翔形>
チュウヒよりも細長い翼をしている。