世界の猛禽類

Vol.27 ヒゲワシ Bearded Vulture(Gypaetus barbatus)

2024.05.23

<分布など>
モンゴル、インド、パキスタンなどの高標高地を中心として繁殖分布している。中東のトルコ、シリア、イラクやヨーロッパの一部、アフリカ東岸にもみられる。絶滅した地域も多い。個体数が急速に減少しているという証拠があるため、「NT(近危急種)」に指定されている。生息域の一部では保護活動により個体数が安定または増加しているが、ヒマラヤ山脈とインドの一部、および孤立した南アフリカの個体群では急激な減少が疑われている。減少の原因は、ジクロフェナク(家畜の抗炎症や鎮痛薬だがヒゲワシにとって毒性がある)によるものだけでなく、風力発電施設の衝突、撹乱の増加、餌の減少による死亡もある。総個体数を1,000~10,000羽と推定している(Ferguson-Leesら2001)が、ヨーロッパでは630~960ペアと推定されており、個体数としては1890~2880羽が生息しているとしている(BirdLife International in prep.)。 ネパールの個体数は2010年に約500羽と推定されている(K. Paudel and T. Galligan in litt. 2014)。イラクでは20ペア以下(R. Porter in litt. 2013)、アラビア半島では成熟個体数が100羽以下(Symes et al.) エチオピアには数百ペアがいると推定されている(I. Angelov in litt. 2011)。2011年現在、ケニアでは3ヶ所、タンザニアでは6ヶ所以上の巣が確認されているのみで、ウガンダの個体数は不明である。モロッコには6~10ペアが生息していると推定されているが(Cuzin 2019)、アルジェリアでの生息状況に関する最近の情報はなく、チュニジアでは絶滅したと考えられている(F. Cuzin in litt. 2011)。従って、北アフリカの総個体数は8~14ペア程度と推定される。南アフリカでは、個体数は約100ペアと推定されている (S. Krüger in litt. 2012)。したがって、世界全体の推定個体数は2,500~10,000羽となる。

個体数の動向は種の分布域全体で異なっている。ヨーロッパの個体数は1980年以降増加しているが、これは主に再導入プログラムなどの保護活動によるものである(BirdLife International in prep.)。しかし、ネパールのアッパームスタングでの調査では、2002年から2014年の間に個体数が89.3%減少したことが記録されており、ジクロフェナク中毒が原因と疑われている(Paudel et al.2016)。インドのヒマラヤでは、近年減少が認識されている(P. Trivedi in litt. 2013)。かつてはヒマラヤ西部と中部でよく見られたが、近年はヒマラヤ中部下部では攪乱のためかあまり観察されなくなり(R. Naoroji in litt. 2011)、ウッタラーカンドでは1990年代後半から明らかに減少している(M. Sharma in litt. 2014)。ラダックとヒマラヤ山脈の高地に生息する個体群は、安全であると考えられている(R. Naoroji in litt. 2011)。eBirdにおけるインドでのヒゲワシ目撃報告の頻度は、2000年から2018年の間に約60%減少しており、この地域における個体数の減少を示している(SoIB 2020)。カザフスタン南東部では個体数は安定しているようである(S. Sklyarenko in litt. 2011)。イエメンでは1980年代初頭から減少している(R. Porter in litt. 2013)。トルコにおけるこの種の生息域と個体数も近年減少している(K. A. Boyla in litt. 2014, BirdLife International 2015)。アルメニアでは1990年代以降、個体数は安定している(M. Ghasabyan in litt. 2011)。アフリカ南部の孤立した個体群では、死亡率の増加(Kruger et al. 2015)と繁殖成功率の低下(Kruger & Amar 2017)により、1980年代初頭から繁殖域が約27%減少し、繁殖テリトリー数は1960~1999年と2000~2012年の間に32~51%減少している(Krüger et al. 2014, S. Krüger in litt.) 全体として、個体数は過去3世代で20~29%減少した疑いがある。

ヨーロッパでは、飼育下繁殖と再導入プログラムがオーストリア、フランス、イタリア、スイスのアルプスで実施され、個体はその後フランスの他の地域にも広がった(Snow and Perrins 1998, Frey and Walter 1989)。スペインの一部では再導入計画が進行中である(J. A. Gil Gallus in litt. 2011)。ピレネー山脈では給餌場が設置され、その結果この種の個体数が増加しており、 この種の生息域全域に同様の給餌場が設置されれば、世界的な個体数密度が向上する可能性が ある(Ferguson-Lees and Christie 2001)。しかし、これらは個体数の増加や個体の生存率の向上に役立っている一方で、ハゲワシに悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、生息地の飽和につながり、これらの地域では個体のテリトリーが重複し、生産性の低下につながる可能性がある(Carrete et al.)。

この種の世界的な個体数の動向を監視するために、協調的な調査を実施する必要がある。家畜に使用されるジクロフェナクやその他の薬剤、気候変動や野良犬の影響による脅威を評価するのが好ましい。営巣地やその周辺での撹乱を減らす。風力発電や送電線の影響を緩和すしたり、法律や啓蒙活動を通じて迫害の脅威と闘うことが必要である。また、この種の生息域全体に給餌場を設置する。

<分類>
2亜種に分類される。再導入個体も生息するため、亜種は微妙なのかもしれない。

〇 G. b. barbatus ヨーロッパ、北西アフリカから中国、ネパール、パキスタンに分布する

〇 G. b. meridionalis アラビアからアフリカ北東部、南部に分布

 

<飛翔形>
翼の幅は太く大きい。他のハゲワシ類と同様である。尾羽が燕尾であることが最も他と違いを感じる飛翔形だと思われる。

 

<渡り>
季節的な渡りは行わない。

<がりメモ>
風切羽根の数がなんせ多い。いったい何枚あるのか双眼鏡で数えたが瞬時に挫折した。