世界の猛禽類

Vol.1 トビ Black Kite (Milvus migrans)

2021.09.15

亜種 lineatus シベリア西部、ウラル山脈の東側から日本まで分布。トルキスタン、カシミール地方、中国南西部に分布し、冬はイラク やインド北部へ渡る

 

亜種 affinis 成鳥 日本のものと大きく色の違いはない

 

亜種 migrans 成鳥 大規模な渡りを行う

<分布>

 日本では全国で見られるが、南西諸島では少なく、特に八重山諸島ではレア。世界的には南北アメリカ大陸、極地に近いエリアを除く広域に分布している。アフリカ大陸北部やユーラシア中部では渡りの時期になると見られる。世界の個体数は100万から255万と推定されている。しかしながら、1950年代にはイスラエルでは絶滅した(その後復活)。ヨーロッパなどでは人間活動や水質汚濁、環境の消失などのために減少しているとされる。

<分類>
世界的には5亜種に分類され、渡るものや留鳥である亜種が見られます。日本で観察される亜種はシベリアから日本、インド、中国、インドシナに分布する。台湾(中国海南省を含む)には別亜種formosanusが生息するため、与那国島では観察される可能性がある。ヨーロッパからアフリカにいる亜種migransをニシトビとして別種扱いする説が依然残っている。

M.m.migrans 中央・南ヨーロッパから北アフリカ、アジア中部・南部までで繁殖し、非繁殖期は南アフリカまで移動するものもいる。

M.m.lineatus ロシアのシベリアから日本、インドシナ(タイなど)、インドで繁殖し、非繁殖期には南アジア、南東アジア、スマトラに移動するものもいる。

M.m.govinda 東パキスタン、インド(lineatusと重複する)から南西アジア、中国雲南省で繁殖する。

M.m.formosanus 台湾、中国の海南省で繁殖する。

M.m.affinis インドネシアのスラウェシ島、小スンダ列島、モルッカ諸島、ニューギニア、オーストラリアで繁殖する。

 

<渡り>
日本で観察される亜種はほぼ留鳥だが、北部のものは南部に渡る。11月下旬から12月上旬頃に北海道の中南部で沢山のトビが移動している所を観察出来る。一体どのような移動をしているのか興味深い。また、スペインのジブラルタル海峡では、9月中旬頃に大規模な渡りが観察される。

<飛翔形>
飛翔形は独特で他の猛禽類とは一線を画す。日本では距離が遠いと色合いが似ていることから、イヌワシのように見える時がある。飛行していると翼幅(翼の前縁と後縁の幅)が細く、更に翼自体が途中で曲がっているように見えることが多い(常にM字飛翔しているような感じ)。尾羽はバチ状か、中央が凹むので類似種はかなり少ない。旋回も一定のスピードを保った旋回もあるが、突如スピードを変えることが多い為、「あートビだな」と感じる飛び方をする。尾羽がごっそり抜けている個体を時折目にすることがあるが、一見別種に見えることがあり注意が必要。

<がりメモ>
沢山いるから無視しがちだけど、ちゃんと観察すると生態も形態も面白い鳥。防衛だってするし、興奮した声だって出す。本当に頭のいい鳥なのです。