世界の猛禽類

Vol.17 シロハラウミワシ White-Bellied Sea Eagles(Haliaeetus leucogaster

2022.12.09

 

<分布など>
オーストラリア、パプアニューギニア、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、スリランカ、インド、中国などの海岸沿いに見られる。日本では記録がないが、今後期待される種である。
以前、世界の個体数は約1,000-10,000羽と考えられていた (Ferguson-Lees and Christie 2001)。中国では繁殖ペアが100-10,000組程度と推定されている(Brazil 2009)。オーストラリアでは、少なくとも500組と考えられているが、過小評価である可能性が高い(Department of the Environment 2020)。香港では、2010年に57羽が生息していると考えられ(So and Lee 2010)、最近の推定では15組となっている(Y-T. Yu in litt. 2020)。ミャンマーでは約100-120ペアと考えられている(C. Zöckler in litt. 2020)。シンガポールでは10-15ペアが報告されている (Y. Ding Li in litt. 2020)。また、広く分布していることから、最近では全体の個体数が10,000を超えるとも考えられている (S. Garnett in litt. 2020)。入手可能なすべての情報に基づき、ここでは個体数を2,600〜41,000頭の成鳥が生息すると現在は推定されている。

オーストラリアでは、主に1980年代から1990年代にかけてニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、タスマニア州、南オーストラリア州で報告された局所的な減少や範囲の縮小から、個体数は減少していると考えられているが、北部や熱帯の遠隔地における個体数は安定していると考えられる(環境庁2020年版)。ビクトリア州では、農業や都市の拡大のために海岸林が伐採され、本種が減少したことが疑われている(Clunie 1994)。しかしながら、2000年から個体数は安定している(BirdLife Australia 2020)。
State of India’s Birds (2020)の最近の情報によると、インドでは過去25年間で72.59%減少しており、3世代で83%減少したことに相当すると考えられる。過去5年間では、年間5.89%の減少が推定されており、2015年から3世代で87%の減少に相当する可能性があるが、不確実性が高い。さらにインドでの動向を分析したところ、2007年から2018年の間に最小で12.23%の減少、最大で49.81%の減少と推定された(S. Quader, Praveen. J and A. Wiswanathan in litt. 2020)。インド国内での著しい減少やその他の局所的な減少を考慮しても、人間の妨害、射撃、中毒、水辺の森林の伐採による繁殖適地の喪失、そしておそらく農薬の過剰使用により、全体の個体数は限界的に減少していると考えられる(Ferguson-Lees and Christies 2001)。これらの理由から「低危険種(LC)」と評価される。
沿岸,島,海岸,マングローブ,河口および陸上の湿地に生息するが,森林地帯や開けた場所,低地のモンスーン林にも生息する (Debus and Kirwan, 2020)。海抜1,500 mまで生息するが,標高900 m以下ではよく見られる。魚類,爬虫類,鳥類,哺乳類,腐肉など幅広い獲物を食べる (Siu-tai et al. 2003)。本種は生息地の破壊、狩猟、農薬による中毒などにより脅威にさらされていると考えられている(Ferguson-Lees and Christie 2001)。ビクトリア州では、農業や都市の拡大のために海岸林が伐採されたため、本種が減少した疑いがある(Clunie 1994)。

<分類>
亜種の分類は無い。

<渡り>
渡りはしないと考えられる。

<飛翔形>
非常に翼が大きく長い。指状部は6枚。ややV字で飛翔していることが多い。尾羽は白いが短いために寸づまりに見える。とまり姿も尾羽が隠れるためにぼてっとして見える。