世界の猛禽類

Vol.12 エジプトハゲワシ Egyptian vulture(Neophron percnopterus

2022.07.19

亜種percnopterusと考えられるが、嘴先端の黒色部は無い。スペインで撮影、ジブラルタル海峡を渡る。成鳥。

 

亜種percnopterusの成鳥。アフリカ大陸に渡る。

 

亜種percnopterusの亜成鳥と考えている。下雨覆などは褐色の羽根が混ざる。

 

亜種percnopterusの幼鳥。渡り経路調査(フライウェイプロジェクト)のためウイングマーカーが付けられている。

 

<分布など>
インドや赤道より北のアフリカでは留鳥として生息している。ヨーロッパ南部、アフガニスタン、トルコなどでは繁殖しており、冬季は南部へ渡る。絶滅したエリアがいくつもある。

ヨーロッパの個体数は6100~9000羽とされており、全世界個体数は18600~54000羽となる。減少が著しく、「EN(危機)」とされている。

ヨーロッパの個体群は過去3世代で少なくとも10%減少している(BirdLife International in prep.)。ヨーロッパの繁殖個体群の40%を擁するスペインでは、1987年から2000年の間に少なくとも25%減少している。ギリシャの個体群は30年間で44~60%減少したと推定されている(Xirouchakis and Tsiakiris 2009, Grubet al.2014, Velevski et al.2015 )。中東の個体数減少は著しく、イスラエルで50~75%減少したことが報告されている(S. Aspinall in litt. 2005)。北アフリカでの減少は、3世代で50〜79%と推定されており、南アフリカ,レソト,スワジランドの地域で絶滅した(Taylor et al.2015),ナミビアでは繁殖種として絶滅している(Simmons 2015)。最も減少しているのはインドで1999年以降壊滅的な減少(年間35%以上)をしており、2000年から2003年の間に68%減少した(Cuthbert他 2006)。減少の原因は、動物用医薬品ジクロフェナックによる中毒とされている。ジクロフェナックは非ステロイド系抗炎症薬で、家畜の抗炎症、鎮痛薬として使用されています。ハゲワシにとっては毒性があり、ジクロフェナクを処方された家畜などを食べたハゲワシは数時間後に腎臓疾患によって死亡するといいます。2006年にインド、ネパール、パキスタンで全面禁止となってからは個体数は安定してきたと考えられている。

<分類>
〇 N. p. ginginianus  ネパールから南インドまで 嘴の先端に黒色部が無い。
〇 N. p. majorensis  カナリー諸島
〇 N. p. percnopterus 南ヨーロッパからアフリカまで 嘴の先端が黒い。

の3亜種に分けられている。色味の違いは今のところ調べていないので、後日更新する予定

<渡り>
島に生息するいくつかの個体群では,遺伝的な隔離がある。それらの個体群は渡りを行わない。北部の繁殖種は長距離の大陸間移動を行う。ジブラルタル海峡やボスポラス海峡,ダーダネルス海峡を利用してアフリカへ向かう (García-Ripollés et al. 2010, López-López et al. 2014, Oppel et al. 2015)。

<飛翔形>
ハゲワシなんだがハゲワシっぽくない飛翔系をしている。次列風切の枚数が猛禽類の中でも多いために翼が長く広く見える。