世界の猛禽類

Vol.6 ヨーロッパチュウヒ Western Marsh-harrier (Circus aeruginosus)

2022.01.14

スペイン撮影 雄成鳥 農耕地を探餌飛行する。亜種aeruginosus?

雄成鳥 特にチュウヒとの飛翔形に違いは感じられない。

雄若鳥 下面に茶色の部分があるし、翼後縁にも若そうな羽根

雌成鳥 虹彩は黄色い。幼鳥よりは黒味が薄い

幼鳥 全体がチョコレート色なのはチュウヒと酷似

<分布など>
ヨーロッパのほぼ全域からモンゴル、中国、ロシアの西部で繁殖する。冬季はインドやアフリカの中南部に渡って越冬する。日本では1989年に山口県の阿知須干拓で幼鳥の記録がある。世界的に個体数が多く、減少傾向は掴みにくいが、今後10年で10%程度の減少が予測されており、「低危険種(LC)」とされている。1969年から2004年の間、西アフリカでの越冬数調査において個体数減少のに大きな変化が見られなかったことがあげられるが、パキスタンとインドにおける2018年の越冬数調査では、減少傾向にあると報告されている。
個体数はヨーロッパでは、繁殖個体数は15万-24万羽の繁殖雌がいると推定されており、バードライフインターナショナルの報告である30万-48.5万羽という成鳥数と整合が取れている。ヨーロッパでの個体数は全体の約48%を占めている。これらを検討すると60万羽〜110万羽の個体数が生息すると推定されている。減少の要因は湿地の乾燥化や排水、狩猟、汚染、農薬、重金属中毒といわれる。いずれにせよ農地、湿地に依存しているために人間活動(農業)の変化によって個体数の増減が影響している。

<分類>
亜種aeruginosusと亜種hartertiに分けられる。ほぼ全てはaeruginosusだが、アフリカ北西部の一部に分布していると思われる。調べたが詳細はよくわからなかった。

<渡り>
9月から10月にかけて繁殖地を離れ、フランスから南はサハラ以南のアフリカ、東は中東まで移動する。2月から3月にかけて帰路を開始し、3月から4月に繁殖地に到着する。9月のスペインでは農耕地に集まり、日本のチュウヒで見られるような集団塒を形成していた。その中には渡り途中と考えられる他種も混ざっていた。

<飛翔形>
日本で見られるチュウヒと違いはない。飛行している姿、探餌している姿も特に違いは感じられなかった。