世界の猛禽類

Vol.2 アカトビ Red Kite (Milvus milvus)

2021.09.24


スペインで撮影した個体(亜種milvus) 尾羽が長いことがわかる


赤みが多少強いこと、模様はBlack Kiteに似ている


初列風切は白く、翼角パッチは茶色。Fingersは5枚となっておりBlack Kiteと異なる

<分布など>
ヨーロッパのほとんどに分布するが、北欧では少ない。北アフリカのモロッコでも見られる。「準絶滅危惧(NT)」とされていたが、近年個体数が増加傾向にある為に「低危険種(LC)」に変更されている。スペイン、ポルトガル、ドイツ、フランスでは減少し、モロッコでは繁殖個体が居なくなっている。近年ではイギリス、スウェーデン、ポーランド、スイスで急増している為、全体的な個体数は安定もしくは増加という判断になっている。イギリス、スコットランドでは19世紀末に絶滅したが、ドイツやスペインなどからの再導入および保護活動の活発化で増加に転じている。減少の原因は殺鼠剤による2次被害の毒殺が主要因とされている。他にも風力発電、狩猟、ロードキル、森林破壊が要因となっているが、フランスとスペインではゴミ捨て場の減少という報告がある。

全個体数は成鳥で6万から7万羽と推定されている。分布域が遠く離れていることから、日本で観察される可能性は著しく低いと考えて良いだろう。標高1,600mまでの農地、牧草地、荒れ地の混じった広葉樹林や森林で繁殖している。モロッコでは標高2,500あたりの亜高山で繁殖していくしていたという。イギリス冬には荒地、低木林、湿地など幅広い環境に生息する。町や都市の周辺でも見られごみや腐肉食をあさっていたようだ。近年は郊外の庭園にも頻繁に出没するようになった。

<分類>
ヨーロッパのものは亜種milvusである。アフリカ東部の離島であるカーボベルデ共和国に別亜種fasciicaudaが生息していたが、1999年の調査では2個体しか確認されず、現在は絶滅した。主要な分布域であるヨーロッパから分布が離れていることなどから別種ではないか(Cabo verde Kite)と考えられていたが、最近の研究ではヨーロッパのものと同一と考えられている。IOCのリストでは未だ別亜種として記載がある。

<渡り>
ヨーロッパではほぼ留鳥であるが、北部のものはフランス南部、スペイン、イタリア、モロッコなどに渡る。8月から11月にかけて繁殖地から南下し、2月から4月にかけて北上する。

<飛翔形>
見た目はほぼトビ(Black Kite)だが、尾羽が長い赤いトビという印象。ややM字のように翼をたたみ気味で飛翔していることもトビと共通する。上面の模様もBlack Kiteとほぼ変わらないが赤みが強い。

<がりメモ>
日本のトビを見慣れているとなんか変?と感じる。だけど、親しみのある飛翔形と淡い赤みがとても美しく、ずっと見ていたいと思うような鳥でした。