Vol.35 ハクトウワシ Bald Eagle(Haliaeetus leucocephalus)
2025.10.19

<分布など>
アメリカ全土、カナダの中部から西部、南東部、メキシコのごく一部で繁殖している。フランス領のサンピエール島・ミクロン島も離れてい入るが、繁殖地になっている。冬季になると北方の個体群は南下し、北アメリカ大陸で広く観察される。
極めて広大な分布域を有するため、分布域の規模基準に基づく「準絶滅危惧」の閾値には達せず、個体群規模は非常に大きい。個体群は増加傾向に見え、個体群の傾向基準における危急種の閾値(10年間または3世代で30%以上の減少)に近づいていない。これらの理由から、本種は「低懸念(Least Concern)」と評価されている。
世界全体の個体数は成鳥20万羽と推定されている(Partners in Flight 2020)。北米大陸(特にアメリカとカナダ)における総個体数は成鳥20万羽と推定している(Partners in Flight 2020)。北米大陸(アメリカとカナダ)における本種の個体数は、わずかに増加傾向にあると推定されており、これは3世代にわたる個体数の急速な増加に相当する(Partners in Flight 2024)。この地域が本種の世界分布域の大部分を占めるため、世界全体の個体数は3世代にわたって急速に増加していると見なされている。北米では40年間で779%増加、10年当たり72.2%増加に相当すると評価している(Butcher and Niven 2007)。
ハクトウワシは絶滅の危機に瀕した時期があり、複数の原因が考えられている。
〇DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)による減少
DDTとは殺虫剤であり、1940〜1960年代にかけてアメリカで広く使用され、食物連鎖を通じて魚や水鳥に蓄積された。それらを食べることによって体に濃縮蓄積した。その結果、卵殻が薄くなり、ふ化率が低下、雛が生まれなかったために急速に減少した。
〇乱獲および駆除
19世紀〜20世紀初期には、ハクトウワシは家畜や魚を襲う「害鳥」と誤解され、州や自治体が懸賞金をかけて駆除していた。ハンターや農民により多くの個体が射殺された。
〇生息地の破壊
開発や森林伐採により、大木や湖沼周辺の巣作り場所が失われた。河川や湖の汚染、ダム建設による魚類資源の減少も影響した。
〇鉛中毒
鉛製の散弾や釣り具の残留により、鉛を摂取して中毒死する例も少なくなかった。現在も一部地域で問題が続いています。
〇バイソンの減少
ハクトウワシは魚が主食だが、冬季や氷結期には死肉(バイソンなどの大型哺乳類の死体)にも依存する。19世紀後半、アメリカ西部でバイソンが乱獲され、かつて数千万頭いた個体数が、1800年代末には千頭以下にまで激減しました。その結果、ハクトウワシが冬に利用していた腐肉資源(スカベンジング資源)が大幅に減少することになり、餌不足が発生し、生存率が下がった地域が複数見られた。バイソンの消失は、草原生態系全体の構造を変化させ、カラスやコヨーテなど死肉を利用する生物群全体が影響を受け、ハクトウワシの間接的な餌資源ネットワークも縮小した。
1972年のDDT使用禁止、1973年の絶滅危惧種保護法(Endangered Species Act)の制定、保護区の設定や人工繁殖などにより、1980年頃から急速に個体数が回復した。
<分類>
2亜種に分類される。両亜種の分布は完全に分かれている訳ではなく、アメリカ中部では交雑個体や中間型が見られる。かつてアラスカ型であるH.l.alascanusという亜種が提唱されたことがある。現在の体系では亜種washingtoniensisとしている。
〇 H.l.washingtoniensis
主にアラスカからカナダ、北アメリカに分布する亜種。大型で全長100cm前後、体の色が薄い傾向にあり、足や嘴の色が明るく黄色い。
〇 H.l.leucocephalus
主に南アメリカから北西メキシコに分布する亜種。washingtoniensisと比べると小型で全長85cm前後である。前者よりも濃い色合いで褐色が強い。足や嘴の色は黄色だが薄い色であり大きさも小さい。
<渡り>
亜種washingtoniensisが渡りを行っており、それなりの個体数が渡るが集中して渡るというよりも、凍結しにくい場所に集結するというようなイメージが近い。
<飛翔形>
指状部(Fingers)は7枚である。ウミワシ類独特の飛翔形である。特にオジロワシやオオワシと違いはない。
<がりメモ>
憧れの鳥でした。もう一度ちゃんと見に行きたいと思っている鷲の一つです。