Vol.21 クマタカ Mountain Hawk-Eagle(Nisaetus nipalensis)
2023.05.23
亜種orientalis 成鳥。翼幅が広いのがわかる。
亜種<i>orientalis</i> 蛇や小型哺乳類などを餌とする。
亜種orientalis 幼鳥。独特の飛翔形
嘴は太く鋭い。
幼鳥。雨覆や風切に白い羽縁がある。
<分布など>
ロシアの沿海州、パキスタン北東部、インド、ネパール、ブータン東部のヒマラヤから、中国、カンボジア、ベトナム、日本まで生息する(Clark et al. 2015)。日本では全国に見られる(千葉県と沖縄県を除く)。この種は、生息地の喪失による中程度の減少が疑われ、今後3世代にわたって森林被覆の喪失率が20%になると予測されている。将来の個体数減少は、少なくとも森林被覆の損失と同等の割合であることが疑われるため、「NT(近危急種)」と評価されている。
Ferguson-Lees and Christie (2001)は、個体数を1,001-10,000個体と推定したが、後者の数字に近い可能性が高いと考えた。これは成熟した個体670〜6,700個体に相当する。日本の個体数は約1,800個体(Asai et al.2006)と推定されている。他の地域からのデータがないため、世界の個体数は1,200-6,700の成熟個体数帯に位置づけられる。森林破壊により個体数は減少していると思われる(Ferguson-Lees and Christie 2001)。2001年から2020年の間に、この種の範囲全体で森林被覆の7.5%が失われ(Global Forest Watch 2021)、これは3世代(29.79年[Bird et al.2020])で11.5%の損失に相当する。生息域の一部では、羽毛を目的とした狩猟(Taiban et al. 2019)、感電死、家禽被害による迫害(T. R. Subedi, S. Gurung, H. S. Baral, S. Thomsett, R. Buij and M. Virani in litt. 2021)といったさらなる脅威を受けている。本種は森林破壊に対して脆弱である(Clark et al. 2015, Global Raptor Information Network 2015)。森林破壊は、農業(Phumee et al. 2017)、インフラ整備、林産物の伐採(Chaudhary et al. 2016)によって引き起こされる。
<分類>
2亜種に分類される。P. h. cristatusは別種記載されていた(Wink et al. 2004a; Christidis & Boles 2008)が、遺伝的な差異が少なく、形態的差異も無いことから亜種となった(Monti et al. 2015, 2018; HBW/BirdLife, Clements)。
〇 N. n. nipalensis ヒマラヤから中国、マレー半島までに分布
〇 N. n. orientalis 日本に分布
IOCによると、日本産のものは固有亜種とされている。沿海州で繁殖するクマタカのDNAは中国や台湾の亜種に近いとされる研究が発表されている。
<飛翔形>
翼の幅は太く、長さもある。その為、翼が大きく雄大に見える。尾羽は短め。指状部(Fingers)は7枚。幼鳥時は初列風切のP1-P3が短く見えるために、翼の後縁が膨らんで見える。この特徴はハチクマやハイタカ属にも共通するが、クマタカは特に顕著である。
<渡り>
季節的な渡りは行わない。中国北東部で記録があることから、渡りの個体群がいる可能性がある。
<がりメモ>
2023年の3月に「クマタカ生態図鑑」が発刊された。情報を集約した良書であると思う。しかしながら、情報が古いことと、滋賀県山梨県個体の見解が多いのが多少気になる。